約 1,012,686 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2526.html
前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ 青い三日月と赤い満月が空にかかる夜に、顔をローブで隠した女が魔法学院の塔の屋根に降り立った。 女の名はフーケ。 土くれのフーケ。 今のトリステインでその名を知らぬ者を探す方が難しい名うての盗賊である。 そんな彼女が今狙わんとしているのは魔法学院の宝物庫だ。 その中には様々な、そして高価な宝が眠っているに違いない。「破壊の杖」と呼ばれるものには特に興味がある。 だが、それだけの宝が眠っているだけあって魔法学院の宝物庫は実に厳重だ。 綿密に調べてみたが隙がない。 扉にはロックの魔法。 壁や天井には固定化の魔法。 どちらも何人ものスクウェアのメイジ によって念入りにかけられたものである。 扉の鍵を入手しようとしたこともあった。 だが鍵を持っている学院長のオールドオスマンは普段は飄々としているのに、さすが高名なメイジと思わせる鋭さを時々見せる。 宝物庫の鍵の管理もオールドオスマンが未だもうろくしていないところ見せるところで、フーケは結局鍵を諦めざるを得なかった。 今、フーケは錬金の魔法を試している。 いかに強力なメイジによってかけられた固定化の魔法といえどもそこは人間のやること。 どこかにミスがあるのではないかと思い壁から床、天井に至るまで少しずつ調べてきたのだ。 そして今日、いよいよ最後の場所を調べているのだ。 結果、スクウェアのメイジ達の仕事は一分の隙もないことが判明する。 「さて、どうするかねえ」 無駄足は無駄足だが、中のお宝のことを考えると諦めてしまうのはおしすぎる。 「なら、あの方法を使うしかないようだね」 この学園の教師から入手した情報に宝物庫の壁は物理的衝撃に弱いのではないか、という話を聞いたことがある。 ただし、この壁はかなり厚く半端な力ではびくともしない。 その教師もゴーレムを使わなければならないと言っていたほどだ。 フーケはゴーレム作成と使役には自信がある。 それを試してみるしかないだろう。 ただ、今はできない。 そんなことをすれば、魔法学院の警備兵ばかりでなく教師をも相手にしなければならないだろう。 できれば警備兵や学院のメイジ達が一カ所に集まったときに決行したい。 「さて、どうするか」 悩むフーケに風が声を運んできた。 「!!!!!!!!!!!!」 その方向には女子寮があり、部屋のいくつかは明かりが灯っている。 普段はもうみんな寝ている頃なのに何をしているのか、と考えたところで思い当たる節があった。 「そうね、そろそろあの時期ね」 フーケのローブがばさりと揺れる。 唇を青い三日月のような形にしたフーケの姿は闇に溶けるように消えた。 「ぬわぁんんだこりゃぁああああああ」 ルイズが思わず両耳を閉じるような声でデルフリンガーが叫ぶ。 「俺の、俺の、俺の体がぁああああああああ」 デルフリンガーは錆びてはいても長剣だった。 幅広で身が厚い実用一辺倒な作りは貴族受けはしないもののそれなりに立派なものだ。 「おおぉおおおおおおおお」 ああ、なんたる哀れ。なんたる悲劇。 「何よ、そのくらいでうろたえないでよ」 「でもよぉ、でもよぉ、でもよぉおおおおおおおおお」 その姿は今や長剣とはほど遠い。 「あはは。ルイズ。もう良いかな?」 何とも言えない笑いを返すフェレット姿のユーノの背中にデルフリンガーは背負われていた。 むろんフェレットに長剣が背負えるはずもない。 なら、何故背負えているか。 デルフリンガーは今やユーノの背中でフェレットサイズの長剣という針のような変わり果てた姿になっていたのである。 「この世に生まれて6000年。こんな情けねえ姿になったのは初めてだ」 「ルイズ、そろそろ止めてあげようよ」 男泣きに泣くデルフリンガーがさすがに哀れになったユーノがルイズに頼むがルイズには聞く気はないようだ。 「いいじゃない。もう少し」 にやにやと面白そうに笑いを浮かべている。 そもそもこんなふうになったのは、デルフリンガーを以後どうやって扱うかを考えていた頃に始まる。 長剣は人間の姿のユーノと比べても大きい。 担いでも両手で持ってもずるずる地面を引きずってしまう。 空を飛んでいれば関係ないが、いつも飛びっぱなしというわけにはいかない。 フェレットの姿になっているときは論外だ。 ならルイズが持ち歩くというのもあるがこれも却下だ。 貴族が杖ではなく剣を持ち歩くのは格好のいいことではない。 様式と礼式に反してしまう。 貴族としてふさわしい態度を養う魔法学院の生徒としては、はなはだまずい。 そこで、2人でうんうん呻りながら考えてたときにルイズが唐突に妙案を出した。 「じゃあ、ユーノがそのデルフリンガーを背負ったままフェレットに戻ったらどうなるの?」 ユーノの本来の姿に関するルイズの勘違いは置いておくとして、ユーノは人間からフェレットの姿に変身すると服やマントに靴はまとめて消えてしまう。 この時、腰のポーチに入れている小物も消えてしまう。 なら人間の姿の時にデルフリンガーを背負って、そのままフェレットに変身したらどうなるだろうか。 試してみました。 さすがは魔法の剣。 服のように消えてしまうことはなかったが、人間の姿のユーノが小さくなるにつれて一緒に小さくなってしまったのである。 ユーノがうごくのにじゃまにならないサイズになってくれたのは嬉しい誤算だ。 と言っても、長剣デルフリンガーは今や針剣デルフリンガーだ。 そして嘆きのデルフリンガーとなってしまったわけである。 「ねえねえ、ユーノ。今度は剣を抜いてみて」 「うん、いいけど……」 背中でデルフリンガーがえぐえぐ鼻をすすっている。 どこに鼻があるのかは謎だ。 「ごめん、もうちょっと手伝って。後で元に戻すから」 「相棒、本当か?本当なんだな」 手足があったら拝んでいただろう と思うような声でデルフリンガーが喜ぶ。 ほっと、一息ついたユーノは背中の剣に手を伸ばす。 「んっ」 間違い、フェレットなので手ではなく前足だ。 「ふんっ」 体をちょっと強くねじった方がいいようだ。 ユーノは今度は勢いをつける。 「ふんっ、ふんっ、ふんっ」 「何してるのよ、ユーノ」 「ルイズ」 少し息切れをしたユーノが顔を上げる。 「手が届かないよ」 「え?」 当然だが、フェレットの前足は短い上にそもそも背中に手を回すようにはできていない。 おまけに人間のようにものを持つような構造にもなっていない。 「ちょっと、そんなはず無いでしょ。もうちょっとこう」 「え、え、待ってよ。ルイズ!」 フェレットの骨格構造を知らないルイズは納得がいかない。 ユーノの肩を持ってぎゅうっとねじり上げた。 「いいいいい、いたいいたいいたいたい。止めて、止めてルイズーーーっ」 「おおおおっ、止めてくれ、相棒がぁあーーーーっ」 抗議の二重奏を聴いてルイズはやっと自分が何をしていたかに気づく。 慌てて手を放し、ユーノの背中をさすってやった。 「ごめん、ユーノ。大丈夫?」 「うん、大丈夫。でも、ルイズ。デルフリンガーを抜く事なんてできそうにないよ」 「そっかぁ」 ルイズも何が何でも背中の剣を抜かせたかったわけではない。 ユーノの体には変えられないので、諦めてもいいのだがそれではとても困る者がいた。 「おおおおおっ。じゃ、じゃあ。俺はずっとこのままなのか?ずっと小せえままなのか?」 「うるさいわねえ。私が抜いてあげるわよ」 ルイズはユーノの背中のデルフリンガーを針でもつまむように親指と人差し指でつまむ。 針のように小さいのでこれが一番やりやすい。 鞘を逆の手の人差し指で止めて、そっと抜いた。 「きゃあっ」 抜いたデルフリンガーが突然光る。 その光はユーノが変身するときの光と同じだ。 ルイズはデルフリンガーを思わず落としてしまう。 床に落ちたデルフリンガーはこれもユーノが変身するときと同じようにサイズを大きくしていき、元の長剣に戻っていった。 「おおおお。俺の、俺の体が元に戻った」 またも号泣するデルフリンガー。 手足があれば踊っているかも知れない。 「ユーノ、これって」 「たぶん僕から放したら元のサイズに戻るんだと思う」 「じゃあ、ユーノがその姿の時は剣は使えないのね」 「うん。無理だと思う」 「そっかぁ」 実はルイズは小さい剣を振るフェレットを見てみたかったのだが、無理ならしょうがない。 ため息と共に諦めることにした。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/715.html
ラ・ロシェールで一番上等な宿『女神の杵』 この宿に泊まったルイズ達は、一階の酒場で適当な料理をつまんでいた。 今後の予定などを話していたが、ロングビルはラ・ロシェールにとどまると聞いて、ギーシュが何故ここに止まるのかと質問した。 「私は、ミス・ヴァリエール、そしてワルド子爵が帰還されない場合の連絡役ですから」 ロングビルの答えに「なるほど」と頷いていると、そこにワルドが戻ってきた。 ワルドはアルビオンに向かう船を調達するために出かけていたのだ。 席に着いたワルドから、アルビオンにわたる船は明後日になると告げられる。 「あたしはアルビオンに行ったことがないからわかんないけど、何で明日は船が出ないの?」 キュルケのふとした疑問にワルドが答える。 「明日の夜は月が重なるだろう、『スヴェル』の月夜だ。アルビオンに行くには距離がある。その翌日の朝ならアルビオンがラ・ロシェールに近づくんだ」 キュルケは、タバサのシルフィードに乗せて貰えば良いと考えたが、シルフィードに無理をさせるのは少し気が引ける、おとなしくワルドの言葉に従うことにした。 ルイズも同じ事を考えていたが、本来ならお忍びの任務、タバサの力を借りるのはあまり良くないと思い、何も言わなかった。 ワルドが席を離れると、あらかじめ預かっていた鍵を机の上に置く。 「さて…そろそろ寝るとしようか。部屋は取ってある、ルイズと私は相部屋だ、後は…」 それを聞いたルイズは顔を真っ赤にする。 「そんな、ダメよ! ままままだ私たち結婚してる訳じゃないし、それに…」 「婚約者だからな、当然だろう?それに…大事な話があるんだ、二人きりで話をしたい」 そう言って、ワルドはルイズを連れて部屋へと入っていく。 後に残された四人はしばらく悩んだが、ギーシュは一人、他の三人は相部屋ということで落ち着いた。 ルイズとワルドが入った部屋は、この宿でもっとも上等な部屋であり、そのつくりは貴族の館の私室のようで、豪華な装飾の割には落ち着いた雰囲気のいい部屋だった。 「きみも腰掛けて、一杯やらないか? ルイズ」 ルイズは言われたままにテーブルに着くと、ワルドが注いだワインを二人で乾杯した、ルイズは恥ずかしさからか、少しうつむいていたが。 「姫殿下から預かった手紙は、きちんと持っているかい?」 ルイズはポケットの上から、アンリエッタの封書を押さえた。 どんな内容なのか具体的に入ってくれなかったが、恋文に似た思いで書いたのだと想像はつく。 ウェールズから返して欲しいという手紙の内容は、もしかしたら…そこまで考えて頭を振った、今はそんなことを考えても仕方がない。 そんなルイズを心配して、ワルドが語りかける。 「不安なのかい? 無事にアルビオンのウェールズ皇太子から、姫殿下の手紙を取り戻せるのかどうか」 「そうね。不安だわ…だけど……」 そこでルイズはハッと気づく、ワルドの後ろに見える、比較的大きな姿見の鏡に、あの青い色の幽霊が浮かんでいたのだ。 ワルドはルイズの視線に気づき、ふと後ろを見る、しかしそこには誰もいない。 鏡にも何も映っていなかった。 「ずいぶん心配しているのだね…大丈夫だよ。きっとうまくいく。なにせ、僕がついているんだから」 「そうね、あなたがいれば、きっと大丈夫よね」 ルイズは落ち着いたフリをして答えるが、内心は焦りがあった。 心の中で誰かが警鐘を鳴らしている、何かがおかしい、何かが引っかかる。 昔、吸血鬼が居た。 その吸血鬼のカリスマ性とも言うべき、人を『恐怖』させ『安心』させる姿。 あの雰囲気に共通する、何かがあるのだ。 いつの間にか、ワルドは遠くを見る目になって、ルイズに語り出した。 ワルドはルイズとの思い出を語り、そして、ルイズの魔法は4大魔法ではなく、別の魔法…すなわち虚無の魔法に最も近いのではないかと言った。 歴史書が好きだったワルドは、始祖ブリミルの魔法についても調べていた、火炎と油による爆発は、火と土の合成だが、単体で爆発を起こせる魔法は存在しないはずだとまで言った。 それが本当の事かどうか分からないが、ルドが自分を評価してくれているのは分かる。 しかし現実味を感じられない、どこか白ける気すらした。 そして… 「この任務が終わったら、僕と結婚しようルイズ」 「え……」 いきなりのプロポーズに、ルイズははっとした顔になった。 先ほど現れた幽霊のことも忘れ、ルイズはワルドの話をじっと聞き続けた。 一方、キュルケ、タバサ、ギーシュの三人は、景気づけと称した一気飲みでロングビルに敗北していた。 翌日、ルイズ達4人は、ラ・ロシェールの町を見て回っていた、ロングビルは一応護衛なのでルイズと行動を共にしている。 ワルドは後学のためにと、ギーシュを連れて桟橋へ行ったが、実際の所ギーシュは体の良い小間使いだろう。 一通りラ・ロシェールを見て回った四人は、『女神の杵』の裏手にある練兵場に来ていた。 「昔はここで修練してたのねー」 キュルケが興味深そうに呟く。 歴史などには興味のなさそうな彼女だが、練兵場の壁は、高位のメイジが固定化をかけたと思われるほどの丈夫さがあった。 そしてその岸壁にも、いくつかの傷や焦げ跡がある。 集団戦と言うよりは、決闘の痕と言うべき傷が、キュルケの心を喜ばせた。 「この宿は昔、アルビオンからの侵攻に備えるための砦だったと聞いています」 ロングビルの言葉に、一同が感心する、言われてみれば宿の作りに不思議な点があったと思い出せるからだ。 そういえば…と、キュルケがロングビルを見る。 「ミス・ロングビルはラ・ロシェールに住んでたの?」 ロングビルはこの宿だけではなく、ラ・ロシェールの事に詳しかった。 事実、町を巡って何か分からないことや疑問があれば、ロングビルが説明してくれたのだ。 「いえ、私は…」 「アルビオン訛り」 ロングビルを差し置いてタバサが答えた、その答えでキュルケとルイズが納得する。 アルビオンの貴族ならば、大陸に来る時にこの町を必ず通る、しかし納得したところで別の疑問が出てきた。 なぜルイズと共にアルビオンに同行しないのか? 故郷ならば、地理にも情勢にも詳しいのだろうが、それなのにアルビオンには同行しないと言う。 その答えは三人にとって驚きのものだった、ロングビルはアルビオンの貴族ではなく、アルビオンの貴族だった者、なのだ。 貴族としての立場を剥奪されたメイジ、ある意味、王党派を恨んでいてもおかしくない人物がルイズの護衛をしていることに、三人は大いに驚いた。 「ミス・ロングビル、なんでルイズの護衛なんて引き受けたのかしら?」 キュルケは不信感を隠そうともしない態度で質問する。 「…私は、戦争を防ぐために手伝って欲しいとしか、オールド・オスマンから承っていませんわ、王党派への恨みがないと言えば嘘になりますが、戦争が始まって孤児が増えるのは…もう、見たくはありません」 ロングビルはルイズを見た、ルイズは何か考えるように、うつむいている。 「私からも一つだけ質問させて頂きます、ミス・ヴァリエール…貴方はなぜモット伯の元へ、シエスタを助けに行こうとしたのですか?」 キュルケとタバサもルイズを見た、この二人にしても疑問に思っていたからだ。 「貴族が、一人の平民を贔屓するのは、決して良いことだとは思えません。モット伯は教育と称して少女を嬲り、売買もしていたと判明しましたが…そうでなかったら、どうするおつもりでしたか?」 その質問は、あらかじめ答えが用意されていた。 いや、ルイズ自身が自問自答していたのだ、これは誰からの受け売りでもない、ルイズ自身の答えだった。 「一度でも友人と呼んだ者を見捨てるのが貴族といえるのかしら」 ルイズは、真剣な目でロングビルを見た。 ロングビルは、その視線に思い出す者があった。 そもそもロングビルの一家が貴族の立場を剥奪されたのは、父親がアルビオンの王家に逆らったからだ。 しかし、父は決して後悔などしていない。 王家よりも、自分よりも、何よりも大事な『理念』を守ろうとした父、その視線とうり二つに見えたのだ。 以前のルイズならば、同じ答えを言ったとしても、そこには説得力が無かっただろう。 しかし今のルイズに見える『威厳』と、目の奥に見える『悲しみ』があった。 「貴方は、精神的にも貴族なのね…」 ロングビルの呟きに、ルイズは少しだけ頬を染めた。 「照れてる」 「う、うるさい!」 タバサの言葉に、いっそう顔を真っ赤にしてルイズが怒鳴る。 「ちょっとあんた何格好いいこと言ってるのよ!ゼロのルイズのキャラじゃないわよ!」 「ゼロって言ったわねこの色ぼけ女!」 キュルケのちょっかいで、普段の騒がしさを取り戻した三人。 その三人を見ながら、ロングビルは何かを決心していた。 キュルケと喧嘩しつつも、ルイズの頭の中にはある記憶が浮かんでいた。 シエスタを助けるため、モット伯へと立ち向かう決心を与えた、ある人物の記憶だった。 『なぜ おまえは自分の命の危険を冒してまで わたしを助けた…?』 『さあな…そこんとこだが おれにもようわからん』 なぜ命がけでシエスタを助けに行ったのか、よく分からない。 アンリエッタからのお願いを、命の危険があると知りながら引き受けたのも、よく分からない。 でも、よく分からないままでも、いいじゃないか…。 前へ 目次 次へ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/724.html
前ページ次ページ堕天召喚録カイジ 第六話「厨房」 ざわ…… ざわ…… (なぜだっ……! なぜっ……! なぜっ……! 俺は……貴族だぞっ……! 平民たちの支配者っ……! グラモン家っ……名門に生まれた男だぞっ……! こんなっ…… こんな平民ごときにっ……! くそっ…… くそっ……! くそっ……! なんでこんなことになったんだっ……!) ギーシュ・ド・グラモンは滝のように冷や汗を流しながら、目の前の男を見つめていた。 男はヴァリエールが呼び出した使い魔の平民である…… 「ククク……どうしたっ……貴族の坊ちゃんよっ……! そろそろ……覚悟を決めるんだなっ……!」 平民がニヤリと嗤った。 ルイズに昼食を抜きにされ、カイジは空腹に苦しんでいた。 帝愛の地下収容所で粗末な食事に慣れているとはいえ、20代のカイジにとって、一食を抜くのはやはり堪える。 (くっ……自分の無能をっ……俺に八つ当たりっ…… つくづく……許せねぇっ……! ガキがっ……! 本当の生死に直面したことのないガキの発想っ……!) カイジは唇を噛みながらも、学院の敷地を歩き出した。 空腹はつらいが、何よりもまずこの学院の地理を頭に入れておきたいと考えたからである。 貴族の部屋には入らないように注意しつつ、ゆっくりと教室や通路の間取りを頭に叩き込んでいく。 (こりゃあ……フレイムさんについてきて貰ったようが良かったかもな……) 一瞬そんな考えがよぎるが、カイジは頭を振って打ち消した。 フレイムはフレイムで使い魔として働いているだろう。安易に人に頼るべきではない。 自分から動かなければ、いざと言うときに人は動いてくれないものであることを、カイジは経験的に知っていた。 ぐぅ~…… ああ、それにしても空腹っ……!! 「ハァ……」 カイジは溜息をついた。粗末な朝食に昼食抜き……なんとかしなければと思う。 そんなカイジに、一人のメイドがおそるおそる声をかけた。 「あの……ひょっとして……おなかが空いているんでしょうか……?」 「げぇっ……!! 美心っ……!!」 ぐにゃ~ 振り向いたカイジの顔が、その少女を見てぐにゃりと歪む。 「え? いえ、私の名前はシエスタですが」 「そ、そうか……わるかった……」 ニコ…… ニコ…… メイドの笑顔に、ぞぞぞとカイジの全身に震えが走った。 (くっ……! 似てやがるっ……!! 笑い方もっ……声もっ……! 坂崎のおっちゃんの娘っ……! 美心そっくりっ……生き写しっ……! なんでっ……! どうしてついてまわるっ……! 畜生っ……この後の展開が読めるっ……バレバレっ……!) ボロ…… ボロ…… カイジは絶望の涙を流す。美心……いや、シエスタは、そんなカイジを心配そうに覗き込んだ。 「泣くほどお腹が減っているんですね……ぜひ、厨房にいらしてください!」 「ちょ、まって…… おろひて…… おろひてくらはい……!」 おろへませんっ……! 美心……いや、シエスタは、がっちりとカイジの腕を掴むと厨房に引き立てていった。 「さあさあっ……どんどん喰ってくれっ……! わしの自慢料理だっ……! もっとも、あまりモノで作ったんだがな……ガハハ……」 「こちら、料理長のマルトーさんです!」 マルトーの厚意で、カイジは暖かく美味い食事にありつくことができた。 なるべく笑顔の二人を見ないようにしながら、カイジは食事をがつがつと平らげる。 「ありがとう……すごく美味かったですっ……! ありがとう、マルトーさんっ……! ありがとう、シエスタさんっ……! 本当に、ありがとうっ……言葉にできないっ……!」 ニコ…… ニコ…… カイジの言葉に、やさしく笑顔を見せるマルトーとシエスタ。 使い魔たちと教室で出合ったときと同じように、カイジはここでも人間の優しさに触れた気がした。 がっ……顔は坂崎親子っ……! (どう見ても坂崎のおっちゃんっ……そして、その娘の美心っ…… くっ……それ以外にみえねぇっ……! こんなにいい人たちなのにっ……!) 顔はっ……坂崎親子なのだっ……! どうみてもっ…… 第六話「厨房」終わり 前ページ次ページ堕天召喚録カイジ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/826.html
ロングビルを助けたギーシュ達は、ロングビルの治療のためシルフィードに乗ってトリスティン魔法学院に急いだ。 学院に到着する頃、遠くから昇る朝日を見て、キュルケはルイズの身を案じていた。 「早く帰ってきなさいよ…」 ギーシュ達が魔法学院に到着した頃。 ルイズは夢を見ていた。 使い魔品評会の日に、アンリエッタがルイズに会いに来た、その時の夢だ。 メイジの常識で言えば、使い魔の居ないルイズはメイジとして失格だと思われても仕方がない。 そんな自分に、アンリエッタは重要な任務を任せた。 他のメイジ達が聞けば、アンリエッタは気が狂ったのかとでも思われるだろう。 なぜ自分だったのか? おそらく、アンリエッタの周囲には、心から信頼できる人が居ない。 この手紙の件を話せる人が居たとしても、アンリエッタの周囲にいる貴族が『政治』を担っている以上、決して話すことは出来ない。 アンリエッタは、この手紙を交渉の材料として使われることを恐れたに違いない。 だから、『おともだちのルイズ』に任せたのだろうか。 もし、アンリエッタが自分を利用しているとしたら? …関係ない、自分は貴族なのだから、王女の命令に従うのは当然だ。 もし、アンリエッタが自分を利用しているとしたら? …関係ない、アンリエッタになら騙されていてもいい、そう思って引き受けたのだから。 アンリエッタが『おともだち』として自分を信頼してくれているのなら、絶対に生きて帰らなければならない。 でなければ、アンリエッタは友達殺しの罪に、一生苛まれる事になるだろうから。 ルイズの意識が、朝焼けと共に覚醒してくる。 わずかに暗い空に流れ星が流れ、あの時名付けた名前を思い出す。 「スタープラチナ…」 ルイズが呟くと、ルイズの手からもう一本の手が現れた。 その手を握りしめ、開き、また握りしめて、その『感触』を確かめた。 「アルビオンが見えたぞ!」 鐘台の上に立った見張りの船員が大声を上げた。 ルイズは起きあがり、船員の指さす方を見ると、雲の切れ目からアルビオンの大陸が見えていた。 周囲をきょろきょろと見回すと、右舷の方向に何かの影が見えた。 「…?」 雲の切れ目から何かが現れたような気がしたので、その方向に向かって集中力を高める。 するともう一つの目が景色を拡大させる、遠見の鏡で遠くを見るかのように、雲の切れ目がクッキリと拡大されていく。 雲の切れ目から見えたのは、大砲を備えた船であり、輸送船や客船には見えない。 「あの船は何?」 ルイズが船員に聞いたが、船員にはその船が見えないらしく、 「何もありませんぜ」 としか返事は帰ってこなかった。 しかし、その船員はルイズの言葉を嫌でも信じるハメになる。 「右舷上方の雲中より、船が接近してきます!」 ルイズが見た船は、いつの間にか輸送船の死角となる雲中から現れ、大砲の照準を向けてきたのだ。 後甲板で、ワルドと船長は、見張りが指差した方角を見上げ驚いていた。 黒くタールが塗られた、いかにも戦艦だと思わせる船体からは、二十数個も並んだ砲門をこちらに向けていた。 「アルビオンの貴族派か?それとも…」 見張り員が輸送船の副長に合図を送る、すると青ざめた顔で副長が船長に駆け寄り、見張り員からの報告を伝えた。 「あの船は旗を掲げておりません!」 船長の顔も、みるみるうちに青ざめる。 「してみると、く、空賊か?」 「間違いありません! 内乱の混乱に乗じて、活動が活発になると予測されていましたが、既に…」 「逃げろ! 取り舵いっぱい!」 船長は輸送船を空賊から遠ざけようとしたが、既に空賊の船は輸送船と併走していた。 ボン!と音を立てて空賊の船から砲弾が発射され、輸送船の進路上にある雲に砲弾の穴が開く。 「船長!停船命令です…」 空賊の船から手旗での停船命令を受けると、船長はワルドを見た。 ワルドはこの船を浮かすために魔力のほとんどを傾けていたため、戦っても勝ち目はない。 ワルドは短く「私も打ち止めだよ」と言った。 船長は、停船命令を受ける旨を、見張り員に伝えた。 空賊に捕らえられたルイズ達は、船倉に閉じこめられていた。 輸送船の船員達は、船の曳航を手伝わされているらしく、ここには居ない。 ルイズはワルドから「チャンスを待とう」と言われ、ワルドの隣に座ってじっとしている。 がちゃりと扉が開き、船室に空賊の男が入ってきた。 「飯だ」 ルイズはじっと黙ってその男を見ていた。 ワルドが受け取ろうとしたとき、男はその皿をひょいと持ち上げた。 「質問に答えてからだ…お前たち、アルビオンに何の用なんだ?」 「旅行よ」 ルイズは床に座ったまま答えた。 「トリステイン貴族が、いまどきのアルビオンに旅行だって?いったい、なにを見物するつもりだ?」 「そんなこと、あなたに言う必要はないわ」 「へっ、随分と強がるじゃねえか」 ルイズが顔を背けると、男は皿と水の入ったコップを床に置いた。 ワルドが皿を取り、ルイズに先食べるよう薦める。 「食べないと、体がもたないぞ」 しかしルイズはそのスープを飲もうとしない。 仕方なくワルドは半分だけ飲み、しばらくしてからルイズもスープを飲んだ。 「あんなやつらの出したスープを飲むなんて…」 ルイズが悔しそうに呟くと、ワルドはルイズの肩に手を回した。 「今は体力を温存するんだ、僕のルイズ…きっとどうにかしてみせるさ」 いつものルイズなら、恥ずかしがって顔を赤らめていたかもしれない。 しかし、今は違う。 ルイズは自分の思考が恐ろしい程冷めているのを実感していた。 ワルドに『毒味』させたのだ、悔しがるような台詞はそれを誤魔化すための演技だった。 私はこんな性格だっただろうか、そんな事を考えながら、ワルドに身を預けていた。 その時再びドアが開かれ、今度は別の男が船倉に入ってきた。 「おめえらは、もしかしてアルビオンの貴族派かい?」 男の質問には答えない。 「おいおい、だんまりじゃ困っちまう、貴族派だったら失礼したな。俺らは貴族派の皆さんのおかげで、商売させてもらってるんだ。」 「…じゃあこの船は、貴族派の軍艦なのね?」 「おめえらには関係ねえことだがな。で、どうなんだ? 貴族派なのか? そうだったら、きちんと港まで送ってやるよ」 ルイズは、悩む仕草をしているワルドを差し置いて、立ち上がった。 そして空賊を見据え、言い放った。 「誰が貴族派なものですか。バカ言っちゃいけないわ。わたしは王党派への使いよ!し、正統なる政府は、アルビオンの王室ね。わたしはトリステインを代表してそこに向かう貴族なのだから、つまりは大使ね。だから、大使としての扱いをあんたたちに要求するわ」 「………」 ワルドはじっと黙っていた、ルイズにはそれが気になったが、決して勝算が無くてこのような事を言ったワケではない。 ルイズの右腕からもう一つの腕が伸びる。 いざとなれば、この使い魔を使って何とかしようと考えていた。 この船が貴族派のものだとして、これから拷問にかけられるのならば、何かの道具を使って拷問しようとするだろう。 それを奪えるだけの力があるはず、そう考えての発言でもあった。 「ハッハッ!こいつは驚いた、お嬢ちゃん正直なのはいいが、ただじゃ済まないぞ」 「あんたたちに嘘ついて頭を下げるぐらいなら、死んだほうがマシよ」 「頭に報告してくる。その間にゆっくり考えるんだな」 そう言って空賊の男はは去っていった。 ワルドはルイズを抱き寄せて、耳元でささやいた。 「君は昔からそうだったなぁ…いいぞ、さすがは僕の花嫁だ」 しばらくして、再び扉が開き、先ほどと同じ空賊が入ってきた。 「頭がお呼びだ」 狭い通路を通って連れていかれた先は、空賊にしては上品に過ぎると思えるほどの部屋だった。 後甲板の上に設けられたその部屋は、空賊船の船長室らしい。 大きな水晶のついた杖をいじる空賊の頭、杖をいじっていることから、メイジであることが理解できる。 その周囲では、ガラの悪そうな空賊たちがニヤニヤと笑いながら、ルイズたちを見ている。 「おい、お前たち、頭の前だ。挨拶しろ」 自分たちを連れてきた空賊がそう言っても、ルイズは頭をにらむばかりで、頭を下げようとはしなかった。 「気の強い女は好きだぜ。子供でもな。さてと、名乗りな」 「大使としての扱いを要求するわ」 ルイズは、先ほどと同じセリフを繰り返した。 そして、ゆっくりとスタープラチナの腕に意識を向ける。 三歩、いや二歩前に出られればそれでいい。 空賊の頭が杖を振り、こちらに向けてくれば好都合だ。 この『腕』は、自分の腕から更に2メイル(m)の距離まで伸ばせるはず。 二歩前に出られれば、空賊の頭から杖を取り上げることも可能なはずだ。 ルイズが悩んでいる間にも、空賊の頭は話を進めていく。 「王党派か…なにしに行くんだ? あいつらはもう風前のともし火だ。それよりも貴族派につく気はないかね?来るべき革命に向け、戦力となるメイジを欲しがっている。たんまり礼金も弾んでくれるだろうさ」 「死んでもイヤよ」 「もう一度言う。貴族派につく気はないかね?」 ルイズはきっと顔を上げ、腕を腰に当てて胸を張る。 「無いわ」 ルイズの言葉を聞いて、空賊の頭は大声で笑った。 「トリステインの貴族は、気ばかり強くって、どうしようもないな。まあ、どこぞの国の恥知らずどもより、何百倍もマシだがね」 空賊の頭は笑いながら立ち上がり、杖を納めた。 そして縮れた黒髪と、付けひげと、眼帯を外す。 「失礼した。貴族に名乗らせるなら、こちらから名乗らなくてはいけないな」 周りに控えた空賊達が、一斉に整列する。 その中央には、凛々しい金髪の若者。 「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官、本国艦隊といっても、すでに本艦『イーグル』号しか存在しない、無力な艦隊だがね。まあ、その肩書きよりこちらのほうが通りがいいだろう」 金髪の若者は威儀を正して名乗った。 「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」 ルイズは驚き、そして緊張が解けたせいか、膝の力が抜けてその場にへたり込んでしまった。 「アルビオン王国へようこそ。大使殿」 そう言ってウェールズは、ルイズとワルドに席を勧めた。 あまりのことに驚いたルイズだったが、ワルドがルイズを立たせて、ルイズの代わりに申し上げた。 「アンリエッタ姫殿下より、密書を言付かって参りました」 「ふむ、姫殿下とな。きみは?」 「トリステイン王国魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵」 ウェールズが「ほう」と呟く。 「そしてこちらが姫殿下より大使の大任をおおせつかったラ・ヴァリエール嬢でざいます。殿下」 「なるほど!きみ達のように立派な貴族が、私の親衛隊にあと十人ばかりいたら、このような惨めな今日を迎えることもなかったろうに!して、その密書とやらは?」 ルイズは慌てながらアンリエッタの手紙を取り出す。 ウェールズに近づき手紙を渡そうとしたが、その前に、確認することがあった。 「あ、あの……」 「なんだね?」 「その、失礼ですが、ほんとに皇太子さま?」 ウェールズは笑った。 「まあ、さっきまでの顔を見れば、無理もない。僕はウェールズだよ。正真正銘の皇太子さ。なんなら証拠をお見せしよう」 ウェールズはルイズの指に光る、水のルビーを見つめて言った。 自分の薬指に光る指輪を外すと、ルイズの手を取り、水のルビーに近づけた。 二つの宝石が共鳴しあい、虹色の光を振りまく。 「この指輪はアルビオン王家に伝わる風のルビーだ。君がはめているのは、アンリエッタのはめていた、水のルビーだ。そうだね?」 ルイズは頷いた。 「水と風は、虹を作る。王家の間にかかる虹さ」 「大変、失礼をばいたしました」 ルイズは一礼して、手紙をウェールズに手渡すと、ウェールズは愛おしそうにその手紙を見つめ、花押に接吻した。 その様子を見たルイズは、やっぱり恋文だったのねと、心の中で呟いた。 その後、ウエールズは手紙の内容を見て驚き、そして、今自分たちの置かれている状況を話した。 表向きには知られてないが、一月ほど前から既に王党派は何人も暗殺され、静かに革命が始まっていた。 アルビオンの所有する戦艦の殆どは貴族派に押さえられており、王党派は既に政治の実権どころではなく、地下に潜伏して逃げ隠れている状態なのだ。 それを聞いたルイズは、トリスティンに伝わっている情報がほんのごく一部だったことを思い知らされた。 アンリエッタからの手紙には、昔の手紙を返して欲しいと書かれていた。 そのため、アルビオンの城、ニューカッスル地下にある秘密港にまで来て欲しいと言われ、ルイズ達はそれを承諾した。 アルビオンの日陰になる雲の中は、暗闇といって差し支えないほどの空間で、周囲は何も見えない。 そんな中でも、熟練の船員達は船を秘密港まで移動させている。 その技術にワルドも驚きを隠せないようだった。 秘密港に到着すると、ルイズ達はウェールズに促されるままタラップを降りた。 そこに、背の高い年老いたメイジと、20代半ばのメイドが近寄ってきて、ウェールズの労をねぎらつた。 「ほほ、これはまた、大した戦果ですな。殿下」 年老いたメイジは、軍艦『イーグル』号に続いて現れた輸送船を見て言った。 「喜べ、パリー。硫黄だ、硫黄!」 ウェールズの言葉に、その場にいる者達が歓声を上げる。 硫黄は火の秘薬として用いられ、使い方によっては恐るべき破壊力を生む。 戦争を避けられぬ彼らにとって、待ち望んだ物だった。 「戦を前にしてお客様が来られるとは、思っても見ませんでした」 パリーと呼ばれた老メイジと共に、ルイズ達を迎えたメイドを見て、ルイズは息を呑んだ。 『……一人前のメイドになって、アルビオンの王族に、仕えることになった、娘を見て、うれしかった…………』 この女性(ひと)だ…! ルイズの頭の中に、モット伯の別荘でメイジと戦った記憶がよみがえる。 なぜ今まで忘れていたのだろう? あの時、私は、この女性の父親を、見捨てて… そこまで考え、ルイズは、気を失った。 ---- #center{[[前へ 奇妙なルイズ-21]] [[目次 奇妙なルイズ]] [[次へ 奇妙なルイズ-23]]}
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/460.html
autolink() ZM/W03-106 カード名:意地っ張りなルイズ カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:1 コスト:1 トリガー:1 パワー:5000 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《虚無》? 【起】[あなたの《使い魔》?のキャラを2枚レストする]あなたは自分のキャラを1枚選び、そのターン中、ソウルを+1。 いいわよ、あんなヤツ! ぜんぜんわかってくれないんだもん… レアリティ:PR illust.ヤマグチノボル・メディアファクトリー/ゼロの使い魔製作委員会 2008年9月ショップ大会 参加賞 カード公開当初はレストする枚数が1枚だと思われていたが、実は2枚だった。 ノンコストとはいえ後列2枚レストではソウルパンプできる対象は精々1枚。 元々《使い魔》のカードは少ない上、後列で使えるカードはプールが少なく、使い辛い。 とはいえ、上手く使えばキャンセルされない限りノンコストで毎ターン与えるダメージが1づつ増え、 同レベル戦時ならばサイドアタックが通るようになると考えれば悪くはない。 ただし、本人のサイズは1/1手札アンコ+能力1つ持ちや最近多くなってきた1/0能力持ちと同じ程度であるため、やはり採用率は低いだろう。 ・関連ページ 「ルイズ」? 《使い魔》?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/452.html
ルイズが魔法学院から抜け出して約十分。 町からも、街道からも離れた、ある貴族の別荘が見えた。 この別荘は、トリスティンの城から見て、魔法学院から更に離れたところにある。 別荘の主を『モット伯』だが、この別荘を『モット伯の娼館』と揶揄するものもいる。 森の中にある別荘は街道からも見ることは出来ない。 しかし、街道を通る行商人たちは、年頃の娘が女衒らしき男に連れられて、森の中に入っていくのを何度も見かけていた。 ドシャッ、と音を立てて、ルイズは森の中に着地した。 別荘の周囲は壁に囲まれており、忍び込むのは容易ではないと感じさせる。 そこでルイズは思考した。 『建物の大きさ、庭の形、衛兵の位置を、空中から見た限りでは、空からの侵入がもっとも確実だが、私は空を飛ぶことが出来ない』 …ふと、ルイズを目眩が襲う。 ブルブルと頭を振って、気を確かにしようと気合いを入れる。 おかしい。何かがおかしい。自分は空を飛べないはずだ。では、どうやってここまで来た? 馬でもない。馬で来るに速すぎる。タバサのシルフィードに乗せてもらえば短時間で来ることも可能だが、そんなはずはない。 空から別荘を見た記憶がハッキリと残っている。自分は、いつの間にか空を飛んだのか!? ゴクリと唾を飲み込み、深呼吸して、考えを中断させる。 「今はシエスタを助けなきゃ」 そう呟いて、ルイズは別荘の正門へと歩いていった。 正門から堂々と入り込んだルイズは、使用人に応接室へと案内され、モット伯の歓迎を受けた。 その途中、女性の使用人を何人か見かけたが、使用人と呼ぶには幼い少女も混ざっている。ルイズはそれに嫌悪感を感じた。 それに気づいたのか、モット伯はルイズに話しかけた。 「ああ、この館の使用人が何かご無礼を致しましたかな?」 「そうとは言ってないわ」 「そうでございましたか。いやはや、彼女たちは貧しい家の出でしてな。私は彼女らに職を与え、教育を施し、生きるための場所を与えているのです。 教育は私の生き甲斐でしてな!」 そう言って高笑いするモット伯に、心底つまらなそうな目を向けると、モット伯は不敵な笑みを浮かべた。 「そうそう、あのシエスタというメイドの事でしたな。彼女は実に気だてが良いのですよ。 良い教育を受けさせれば、メイドだけでなく教育係の口もありましょう。ですから私が彼女を預かろうとしたのです。料理長も快く…」 「快く? なら、あの金貨は何?」 腹立たしさを隠しきれないルイズは、自分の声が心なしか低くなっているのに気づいたが、今更怒りを隠しても仕方ないと考えていた。 「…おやおや、ご存じでしたか。何せ優秀なメイドを引き取るのですからな。私からあの料理長…ええと、確かマルトーと言いましたか、彼へのココロザシというものです」 「そう? まあいいわ。それよりもシエスタに会わせて貰えないかしら」 「ははは、そうそう急ぐこともないでしょう。夜分にこの別荘をお尋ね頂いたのです。シャンパンでも開けましょうか、このシャンパンはなかなか珍しいものでしてな」 モット伯は、まるでルイズを無視するかのように話を続けると、使用人にシャンパンを持って来させた。 「雲が月を隠すと、雲の隙間から鈍い光が漏れます。雨が降った後であれば、月明かりが蛍のように雲を光らせるのです。このシャンパンはそれをイメージしたものです」 シャンパンを開けると、ぼんやりと輝く白い煙が出て、さながら星空のように天井を覆った。 ギーシュとは違う意味でキザったらしい態度を取るモット伯に、ルイズも我慢が出来なくなった。 「もういいわ!シエスタはヴァリエール家で引き取る約束が済んでるのよ!すぐにシエスタに会わせなさい!」 モット伯は貴族ではあるが、ヴァリエール家に比べればその格式には雲泥の差がある。 ヴァリエール家で引き取るのは出任せだが、家の名を使ってモット伯を脅かせば、少しは効果があるはずだと、ルイズは思いこんでいた。 「目も耳もありません」 だが、突如後ろから聞こえた声にルイズは背筋を凍らせた。 ルイズは腰に携えた杖を掴もうとしたが、声の主に腕を掴まれ、杖は床に滑り落ちてしまう。 「光る煙を出すシャンパンなんて悪趣味だと思ったけど、頭の中も悪趣味ね!」 気丈にも腕を掴まれたまま叫ぶルイズ。 ディティクトマジックという魔法がある。 マジックアイテムが仕掛けられていないか、誰かに魔法でのぞき見されていないかを探す魔法で、光り輝く粉が探査領域を舞うという特徴を持つ。 煙を出すシャンパンはカモフラージュだったのだ。 悪趣味なシャンパンが、何らかのマジックアイテムだったとしたら、魔法の使えないルイズでも『怪しい』と気づいただろう。 しかし、ルイズはモット伯の雰囲気に飲まれていたのだ。モット泊はメイジとして強い訳ではないが、自分のキャラクターをよく知っている。 時には人に取り入って、時には人を蹴落として、今の地位を手に入れたのだ。 「いかが致しますか」 ルイズを押さえつけているメイジは、グレーのマントの仲から杖をちらつかせ、ルイズを地面に押さえ込んだまま言った。 モット伯は短く「再教育だ」と言って、気味の悪い笑顔を見せた。 あまりの気味悪さに、ルイズはありったけの罵声を飛ばそうとしたが。 「このヘンタイ!こんな事をし…………!…………!!!…………!」 ルイズの声はモット伯に届くことはなかった。 ルイズはサイレントの魔法をかけられ、まるで荷物でも運ぶかのように地下牢へと運ばれていった。 しばらくして静かになった応接間で、モット伯はルイズの杖を拾い上げると、舌先で握りの部分を舐めた。 ルイズを取り押さえたメイジはそれを見ていたが、さしたる関心を向けることなく、事務的な口調でモット泊に声をかけた。 「先ほどの娘、ヴァリエールと申しましたが」 「ああ? あれは、あのヴァリエール家の三女だ。君は知っているかね?数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール家の三女は、ゼロのルイズと呼ばれている」 「ゼロ、ですか」 「魔法成功率ゼロ、ゼロのルイズ。何とも愉快じゃないか。彼女は魔法を使おうとすると爆発を起こすそうだ」 「爆発?」 モット伯は、オールド・オスマンの部屋にあるものより小さい『遠見の鏡』を見る。 「この別荘には空を飛んで近づいてきていた。フライかレビテーション程度は使えるのだろうが、風を起こそうとしても、練金しようとしても爆発するそうだ」 モット泊と、グレーのマントをつけたメイジは、応接室を出て『教室』と名付けた部屋に向かう。 「『平民』の体はさんざん味わったが、『高貴な貴族』の味も味わってみたくてねぇ。あの娘は出来損ないのメイジだが、ヴァリエール家の三女だ。血統は申し分ない」 「ヴァリエール家を敵に回すことになりますぞ」 「心配はない。魔法の使えぬメイジに貴族の価値はないのだ。そうだな…『世間知らず極まりないヴァリエール家三女は、メイドを探しに危険な森の奥へと入り込み、オークに嬲り殺された』…とういうシナリオはどうかね」 「ありきたりですな」 男は、相変わらず事務的な口調で答えていた。 ルイズは牢屋の中から、周囲を見渡していた。 牢屋は二重構造になっており、通路に面した鉄格子は細い鉄棒で作られている。 牢屋の奥にはもう一つ鉄格子がある。格子の太さは屈強な戦士の二の腕ほど、格子の幅は広く、ルイズならすり抜けることも可能だろう。 奥は暗くて何も見えないが、糞便のような不快な臭いが漂ってくる。 ルイズはやり場のない怒りを発散しようとして、鉄格子を蹴飛ばそうとした。 プギィーーーッ! おぞましい叫び声と共に、鉄格子の奥から毛に包まれた腕が伸びて、その指がルイズの鼻先をかすめる。 「…………!!!」 ルイズは悲鳴を上げたが、サイレントの魔法をかけられたままなので、その声は響かない。 ブギィーーーッ!ギィーーーーッ! 不快極まりない叫び声から、奥の牢屋にいる生き物が何なのか理解できた。 二本足で歩き、人間を待ち伏せして殺すだけの知能を持ち、木の幹を棍棒として使うどう猛な獣、オークだ。 オークは、戦争の道具としてメイジに飼われることはあるが、使い魔になることはほとんどない。 平民を使い魔にした方がマシだと言われるほど、オークは嫌われている。 人間の価値観から見てあまりにも下卑、それがオークへの評価だった。 まれに長老と呼ばれる知能の高いオークもいるらしいが、噂でしかない。 この館の主人がなぜオークを飼っているのか知らないが、ロクな理由ではないだろう。 ルイズは「お似合いね」と、呟いた。 しばらくして、『教室』と名付けた部屋にモット伯が姿を見せる。 ベッドの上に寝かされ、鎖で両手足を拘束されたシエスタは、これから何をされるか分からない恐怖に包まれていた。 「待たせてしまったね」 モット伯はわざとらしく、見せびらかすように、ルイズの杖を振る。 それを見たシエスタの表情が変わった、恐怖とは違う感情がわき上がったのだ。 「さて、シエスタ!君は困ったメイドだ、由緒あるヴァリエール家の三女をひどい目に遭わせてしまうのだからな!」 そう言って、シエスタにレビテーションの魔法をかけ、荷物を運ぶのと同じようにして地下牢へと運んでいく。 地下牢に降りると、シエスタはルイズの入った牢屋の隣に入れられた。 「ルイズ様!」 「………!」(シエスタ!) ルイズがシエスタを心配して声を出そうとするが、サイレントの魔法のせいで声が届かない。 「………!」(あんた大丈夫なの?アイツに何かされてない?) 「ルイズ様…まさか、私を助けに…」 「………!」(べっ、べつにあなたを助けに来た訳じゃないんだからね。ちょっと気になっただけよ) 「そんな、私、こんな迷惑をかけてしまったなんて…」 「………!」(だーかーらー!) 通じているのか通じていないのかよく分からない会話は、奥の部屋から聞こえてきた鳴き声に中断させられた。 ブギィィーーー! ガシャン!と、鉄格子に巨体がぶつかる音がする。 身長2m、体重は400kgを超えるであろう獣の迫力に驚き、シエスタは体を硬直させてしまう。 「さて、今日は何のお勉強をしようかね。…お友達との再会を記念して、友情のお勉強をしましょう!」 そう言うとモット伯は、ポケットの中から鍵を取り出して、牢屋の奥へと投げ込んだ。 鍵はチャリンと音を立ててオークの牢屋に落ちた。 「どちらかが囮にでもなれば、鍵も外せましょう!」 囮? 冗談じゃない。オークの実物を見たのは初めてだが、その残酷さは話に聞いている。 逃げるための魔法も使えないのに、囮になるなんて考えられなかった。 ルイズは、悩んだ。 どう考えても種絶望的な結果しか導き出せないからだ。 「…ルイズ様。マントを、できるだけ大きく、振っていただけませんか」 シエスタの言葉を聞いて、ルイズは頭にクエスチョンマークを浮かべたる。 「牢屋の前でバタバタと振って下さい。オークは、ひらひらした物を見ると、それに興味を牽かれるって、お爺ちゃんが言ってました」 一片の曇りも、迷いもなく、オークを見るシエスタに、ルイズは驚いた。 ルイズにはなるべく安全な手段で囮を任せ、自分は危険な場所へと赴こうとしているのだ。 ルイズは今、杖を持っていないし、自分の味方になるメイジもいない。 しかし今ここに、誰よりも信頼できる『仲間』がいた! 絶望的な状況には変わりないのに、絶望を絶望だと感じさせない。 シエスタの勇気は、今、貴族の誇りよりも遙かに気高く、そして崇高に輝いていた。 ルイズはマントを脱ぐとシエスタの牢屋に投げた、シエスタは驚き、ルイズを制止しようとする。 「…だめです!そんな、危険なことは、私がやります!」 幸か不幸か、シエスタの声に興味を惹かれたオークは、気味の悪い声で叫びながらシエスタの牢屋へと手を伸ばした。 鉄格子をガシャンガシャンと震える。 シエスタは、自分の言葉がルイズを死地に赴かせてしまったのだと悟って狼狽えた。 しかし今更何をすることも出来ない。ルイズから預かったマントを手に取り、闘牛士のようにオークの前へとちらつかせ、必死になってオークを煽った。 ガシャン!ガシャン!と響く鉄格子の音。そしてオークの叫び声。 生きた心地のしなかったが、死んだ気にもならなかった。 ルイズは鉄格子の隙間に体を滑り込ませると、奥に落ちている鍵へと静かに歩く。 ブギィイイイイイイーー! 吐き気のするような声が聞こえてくるが、それほど気にならない。 鍵だけを見て、静かに歩く。 あと5歩。 ギィイ!ピギー! あと4歩。 ガシャン!ガシャン! あと3歩。 ブゥィイイイーーッッ! あと2歩。 ギィィィ!! あと1歩。 きゃあっ! 突然聞こえてきたシエスタの悲鳴に驚き、シエスタを見る。 シエスタはオークの興味を牽こうとして近づき過ぎたのだ。すでに片手を掴まれ、オークの牢屋に引きずり込まれそうになっている。 「やめなさい!」 気づいたときには叫んでいた。 オークの視線がルイズを捉えると、オークはその巨体からは想像も出来ない速度でルイズに接近し、ナワバリを荒らされた怒りをルイズにぶつけた。 強烈な一撃を受けたルイズは宙を舞い、鈍い音を立てて鉄格子に衝突し、力なく崩れ落ちた。 「ほっ!いい見せ物でしたな」 モット伯はそう呟くと、すでに興味は失ったのか、牢屋を後にした。 ルイズとシエスタの体を味わってやろうと思っていたが、オークに蹂躙された後では興味も失う。 オークに触れた者はオークと同じだと言わんばかりの態度で、モット伯は二人を見捨てた。 それが彼の命取りだった。 鉄格子に叩きつけられ、気を失うまでの一瞬の間に、ルイズは意識の中で誰かと会話していた。 『やれやれ…もう少し速く気絶してくれれば助けられたんだがな』 「…誰よ、あんた」 『俺のことはいい。時間がない、少し体を貸してもらう』 「あたしの体を?」 『このままじゃ助けられないんでな』 「助けるって、オークから? あんたが何者か知らないけど、出来るの?」 『ああ、任せな』 ルイズは、見ず知らずの相手に、まるで長年戦いを共にした戦友のような奇妙な感覚を覚えた。 そして「頼んだわよ」と告げて、意識を手放した。 ---- //第六部,スタープラチナ #center{[[前へ 奇妙なルイズ-11]] [[目次 奇妙なルイズ]] [[次へ 奇妙なルイズ-13]]}
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/320.html
「おお、来おったか、ミス・ヴァリエール」 ルイズは、オールド・オスマンに呼び出されて、学院長室にいる。 呼び出された理由は決闘以外のなにものでもない。 「さて…、今日はヴェストリの広場が妙に騒がしかったの」 「………」 ルイズは答えない、いや、答えられない。そもそもルイズとギーシュの決闘という事であれば、ルイズとギーシュが責任を取らせられるが、あのメイドに責任の余波が及んでしまっては自分のしたことの意味がないからだ。 「そこにある遠見の鏡で見させて貰ったぞ」 「はい…」 力なく答えるルイズ。しかし、そんなルイズを見たオスマン氏は楽しそうに笑い出した。 「ほっほっほ、見事じゃった、ミス・ヴァリエール。これであの小僧も少しは反省するじゃろうて」 その言葉に驚いたルイズは、はい、とだけ答えた。 「遠見の鏡と言ってもな、ある程度は声も伝えられるんじゃ。この喧嘩の原因はギーシュの二股ではなく、メイドの…確かシエスタと言ったかの、その娘が原因のようじゃな」 「はい、ですが」 「それ以上言わんでいい。あの娘はメイドとしての義務を果たしただけじゃ。この学院の人事に関する決定権は女王陛下からワシが賜ったものじゃ。生徒が騒いだぐらいでメイドを路頭に迷わすようなことはせんよ」 「ほ、本当ですか!…ありがとうございます」 学園長のオールド・オスマンは、齢300とも言われる偉大なメイジであり、あらゆる立場の者達に分け隔て無く接する貴族だとも噂される。 格式や血統を重視する貴族達の中では珍しい存在だが、正直ここまで暖かい言葉をかけられるとは思っても居なかった。 「それにあの娘もあと五年…いや二年もすればムッチムチのプリンプリンに…」 訂正しよう、平民相手にも貴族相手にも見境のないエロジジイだ。たぶん。 ルイズの軽蔑するような視線に気づいたのか、オホン、と咳払いをして居住まいを正した。 「さて本題に入ろう。アンリエッタ姫殿下が近々この学院を訪問なさるそうじゃ」 「えっ!姫殿下が…」 「そうじゃ、姫殿下は今近隣の領地を視察されておっての、こ視察の締めくくりとしてこの学園に訪問される。そこで『使い魔の品評会』を開こうと言うんじゃが…」 ゴクリ、とルイズののどが鳴る。 「王家からの使いの方が言うには、欠席は認められないそうじゃ」 ルイズの肩に、久しく感じていないプレッシャーが重みとなって感じられた。 欠席は認められない。メイジとして使い魔が居ないというのは、非常に不名誉なことだ。姫殿下の前で一人だけ使い魔のいない姿を晒すのは何としてでも避けたい。 「具体的な予定はまだ決まってはおらんし、中止の可能性もある。順調なら十日後あたりに朝食で発表され、その翌日か翌々日あたりにでも開催されるじゃろう」 オスマン氏はじっとルイズの顔を見た。真面目な表情のオスマン氏を見るのは珍しい。普段はくだらない冗談を言ったりしている。生徒達にも「本当に偉大なメイジなのか」と疑問を持つ人も少なくない。 しかし目の前に居るオスマン氏は間違いなくメイジの、貴族の顔だ。 これにはルイズも緊張して、体を硬直させてしまった。 「ほっほっほ、まあメイジには特性があるしのう。今は精一杯がんばりなさい」 そう言って笑うオスマン氏の顔は、同一人物とは思えないほど和やかだった。 話が終わり学院長室を出ようとしたルイズだが、オスマン氏が何か思い出したかのように「ああ、そういえば」とつぶやき、ルイズを引き留めた。 「ミス・ヴァリエール。ところで女子寮の中で何か変わったことは起きておらんかね」 「え? いえ、特には…」 「ふむ、それならいいんじゃ。行ってよろしい」 オスマン氏の言葉に何か腑に落ちないものを感じつつ、ルイズは学院長室を後にした。 夜中。 キュルケから差し入れられた『ゲルマニア特性冷え性に効く特効薬』を、 半ば無理矢理飲ませられたタバサは、いつもなら眠っている時間に目が覚めた。 尿意だ。 眠い目をこすって部屋を出て、寝間着のままお手洗いに向かう。 廊下を歩く途中、何かが揺らめいたように見えた。 「…?」 よく目をこらして見ると、身長2メイルほどの白い人影が、ぼんやりと浮かび、消えた。 そしてその翌日から、女子寮では小物が紛失するといった事件が多発するようになる。 余談だが 人影を見た翌日、タバサはなぜか下着を二枚く洗濯していたとか。 前へ 目次 次へ
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/560.html
autolink() ZM/W03-077 カード名:ルイズ&アンリエッタ カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:1 コスト:0 トリガー:0 パワー:1500 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《虚無》? 【永】応援 このカードの前のあなたのキャラすべてに、パワーを+500。 【起】[このカードをレストする]あなたは自分の山札を上から1枚見て、山札の上か下に置く。 RR:アンリエッタ「私たちはお友達じゃないの!」 RRR:アンリエッタ「ありがとう、ルイズ・フランソワーズ」 レアリティ:RR RRR illust.ヤマグチノボル・メディアファクトリー/ゼロの使い魔製作委員会 小悪魔 杏や香水のモンモランシーの互換効果を持つ。 杏やモンモランシーとは違い条件がカードのレストであるため毎ターンデッキトップ確認&コントロールが可能であり、 応援持ちであるため後列に居座って邪魔になる事もない。 レベル1でコスト不要であるため、デッキトップ連動効果や一ノ瀬 ことみなどでの手札交換、集中を多用するデッキならば、入れておいても損はないだろう。 ・関連ページ 「ルイズ」? 「&」?
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1934.html
「そんなに堅くならなくてもいいわよ」 「はっ、はい!」 シエスタは、エレオノールの気遣いに緊張して、かえって体を強ばらせていた。 モンモランシーはシエスタの隣に座り、馬車の窓から外を眺めている。 シエスタとモンモランシーの二人は、エレオノールの乗ってきた馬車に乗り込み、ラ・ヴァリエール領へと移動している最中だった。 シエスタとモンモランシーは魔法学院の制服姿、手持ちの小道具を入れた小さなバッグを脇に置いている。 エレオノールは飾り気のない白を基調とした服を着ており、魔法アカデミーの紋章が胸に刺繍されていた。 エレオノールは波紋についてシエスタに質問するが、緊張しているシエスタはうまく説明できず、そのたびにモンモランシーが説明を補足する。 だが、魔法学院では習わないような専門用語が出てくる度に、モンモランシーも狼狽えてしまう。 「オールド・オスマンの論文では、波紋はメイジも平民も等しく持つモノだとされているわね。体内を循環する血液に波紋は本来備わっていて、副次的作用として覚醒作用と浄化作用が……」 水系統を基にした、人体構造の研究にも目を通しているエレオノール。 彼女の知識はモンモランシーとは比較にならない程深かった。 「は、はい、たぶんそんな感じだと思います」 モンモランシーは冷や汗をかきつつ、曖昧な受け答えで誤魔化すことしかできなかった。 しばらく馬車がすすみ、外の景色が移っていくと、シエスタもようやく馬車の雰囲気に慣れてきた。 強ばっていた肩から力が抜け、どこか懐かしむように外の景色を見つめる。 「シエスタ?」 モンモランシーがシエスタ側の窓から外を見ると、外には草原が広がっており、その遙か先には森林が見えていた。 そよ風に吹かれた草花が柔らかい太陽の日差しを受けて輝いている、シエスタは故郷を思い出していた。 「あ、はい」 「あんまりきょろきょろしちゃ駄目よ」 「すいません、あの、草原が綺麗だったもので…」 エレオノールも外を見る、そして、少し目を細めてから、座席に座り直した。 「ルイズは、変わった子だったわ。あの子ったら子供の頃、カトレアのためにこの草原まで花を取りに来たのよ」 「ルイズ様が、ですか?」 ルイズと聞いて、シエスタが反射的に聞き返した。 「ええ。ヴァリエール家の中庭に、小さな花の種が風に乗って飛んできたの。 カトレアが『どんな花を咲かしているのでしょうね』なんて言うから、ルイズったら馬で遠乗りした時に、泥だらけになるまで花を探してたのよ。 この草原はルイズが花を探した場所なの」 「…そうですか」 「ねえ、魔法学院ではルイズがいろんな人に迷惑をかけたのでしょう?あの子、どんな事してたのか、教えて欲しいわ。それと貴方ルイズのこと知っているみたいだし、貴方のこと教えてくれないかしら」 モンモランシーはツバを飲み込んだ。その時の音が、やけに大きく聞こえたので、自分が緊張しているのだと理解できた。 魔法学院でルイズが何をしでかしたか、どれだけ被害を被ったか、馬鹿正直に話すわけにはいかない。 その上、シエスタはシュヴァリエを賜ったとはいえ元平民、貴族の上下関係厳しいトリステインで、田舎出身の平民がラ・ヴァリエール家の人間を診察するなど考えられない。 しかしシエスタは、隣で頭を悩ませているモンモランシーの思惑など知ったことではない、馬鹿正直に話をしてしまった。 「私がオールド・オスマンに『波紋使い』だと告げられる前は、魔法学院のメイドとして過ごしていました」 「……メイド?」 「はい、オールド・オスマンは、私の曾祖母『リサリサ』に恩を返すつもりで私を雇って下さったそうです」 隣に座るモンモランシーは『やっちゃった』と言わんばかりの視線でシエスタを見ていた。 ラ・ヴァリエール家の長女に『私は元平民です』などと言おうものなら、その場で馬車から放り出されてもおかしくない。 いや、怒り狂って自分も一緒にうち捨てられてしまうかもしれない、そんな物騒な未来予想図がモンモランシーの頭をよぎった。 「そうだったの。オールド・オスマンは貴方を保護していたとしか言っていなかったわ」 「保護ですか?」 「ええ。きっと、貴方が怪しまれるのを防ぐためじゃないかしら」 モンモランシーの予想に反して、エレオノールはシエスタが元平民である事実を受け止めていた、それどころか、あらかじめ知っていたかのような反応だった。 エレオノールは、リサリサと出会った後のオスマンが、どんな苦境に立たされていたのかを話し始めた。 当時、人間と亜人はまったく別の系統で発生した生物だとする学説と、人間と亜人は一つの根源から枝分かれしていったとする学説が対立状態にあった。 そんな時にオールド・オスマンは、『波紋』という未知の説を打ち出したのだ。 あらゆる生命体が持つ力であるが故に、系統魔法や先住魔法の力を底上げするという『波紋』は、すべての生物は根源が一つだと証明するものでもあった。 そのため、対立する学者達から命を狙われたのだ。 幸いにもオールド・オスマンの唱えた『波紋』は、ごくごく微々たる力でしかなかった、そのため彼自身の老化を遅らせることはできたが、他人にそれを分け与えることはできず、『波紋』はアカデミーから忘れられていった。 だが、それはオスマンの策でもあった。 『波紋』をメイジ同士の争いに利用されぬために、波紋使いである『リサリサ』の存在を隠すために、あえて『波紋』を役立たずであると印象づけたのだ。 シエスタを魔法学院で雇っていたのは、リサリサの血を引く一族へのせめてもの恩返しであった。 シエスタが『波紋使い』の素質があると知ってからは、シエスタを保護するために雇っていたのだと対外的に説明している。 そのためエレオノールは「オールド・オスマンは、シエスタを保護するために魔法学院で雇った」と思いこんでいるのだ。 「オールド・オスマンの研究は確かに素晴らしかったわ。でも、改めて読んでみると不思議な点がいくつかあるわね。たとえば貴方のような『波紋使い』の存在を隠すために、わざと不完全に書かれているみたい」 「そ、そうなんですか」 オールド・オスマンという人物の底知れなさに、シエスタは少しだけ驚いた。 モンモランシーも驚いている、スケベ爺が実は凄い人だった、そんな風に考えているに違いない。 「もし、その当時貴方のような『波紋使い』が世に出ていたら、きっと『先住魔法を使うエルフの間者だ』と誤解されて解剖されていたでしょうね。オールド・オスマンの先見性には驚かされるわ」 エレオノールがシエスタの瞳を見つめる。 「さ、この話はもういいでしょう。ルイズの話を聞かせてくれないかしら」 「はい。私がルイズ様からお声をかけて頂いたのは……」 エレオノールは、シエスタとモンモランシーの話を寂しそうに聞いていた。 モンモランシーが、ルイズの勝ち気さに愚痴を言うと、『あの子はそういう子だから』と言って笑った。 シエスタが、ルイズは魔法学院で働いている平民達にも気を配っていた、メイド仲間からも尊敬されていたと語ると、エレオノールは『あの子も成長したものね』と言って、ほんの少しの間だけ…声を殺して泣いた。 「…ごめんなさい、ちょっと、取り乱しちゃったわね」 エレオノールはそう言いながら、涙で濡れた目元を拭った。 「父が倒れたの。ルイズが死んだって聞かされて、相当こたえたんでしょうね。私も父も、魔法の出来ないルイズを叱ってばかりだったわ」 顔を上げると、シエスタとモンモランシーの顔を交互に見つめて、エレオノールは笑う。 「魔法が使えなかったら、貴族は貴族として認められないの。だから私も父も厳しく接してきたわ。でも、一度もルイズを褒めてあげられなかった……きっと、私と、父様を、ルイズは恨んでいたでしょうね」 「そんなことはありません。絶対に、そんなことはありません!」 シエスタの口調が強くなり、エレオノールが少し驚いた。 「ルイズ様は、土くれのフーケに立ち向かったんです。『立場における責任を果たす』と私に仰って下さったのは、他ならぬルイズ様です!そんなルイズ様が家族を恨んでいるだなんて……絶対に、絶対にありえません!」 「ちょ、ちょっとシエスタ、無礼よ!」 モンモランシーがシエスタの肩を押さえる、はっとして、シエスタの興奮は一瞬で冷めた。 「あ……す、すみません、あの、興奮してしまって」 急におどおどしだすシエスタを見て、エレオノールは、静かに微笑んだ。 「いいのよ。気にしないで…ね。到着したら妹にも、父にも、母にも、その話を聞かせてくれないかしら」 「…はい」 ごめんなさい、と、シエスタが心の中で謝った。 ルイズは生きている。 それも、吸血鬼として。 でも今は、シエスタが知る『尊敬するルイズ様』の姿をエレオノールに語るべきだと思った。 シエスタはもう一度、心の中で謝った。 もしルイズが心まで吸血鬼になっていたら、自分はルイズを殺さなければならないのだから。 エレオノールは、少しだけ救われた気がした。 自分の気の強さは、ルイズを厳しく教育するために養われたのかもしれないと思った。 ルイズが死んで以来、覇気が抜けてしまったのは自分だけではない、父も母も、口には出さないが心が疲れ切っている。 ルイズを溺愛していた、ルイズは誰よりも愛されていた! でもそれをルイズに語ることはできない、ルイズが貴族として、メイジとして一人前にならなければ、自分たちが死んだ後残されたルイズが苦労する。 だからルイズに厳しく接してきた。 そして、厳しく接し続けたままルイズは死んでしまった。 いや、ルイズを『貴族らしさ』という言葉で死に追いやったのは自分達だ。 本音を言えば、どんなに無様でも、ルイズには生きていて欲しかった。 けれども、シエスタの言葉を聞いて、自分たちがいつまでも悲しんではいられないのだと気付かされた。 父の教えが、母の教えが、自分の教えがルイズに伝わり、ルイズの言葉が、シエスタに受け継がれている。 ルイズは本当に立派になったのだ、そして死んだ。 だから自分たちもラ・ヴァリエール家の人間として、役目を果たさなければならない。 魔法アカデミーで一番刺々しい茨だったエレオノール、彼女の棘は、ルイズの死と共に落ちたのだ。 エレオノール、モンモランシー、シエスタ。 三人を乗せた馬車がラ・ヴァリエールの居城に到着する頃には、漆黒の空に二つの月が浮かんでいた。 「いらっしゃいませー」 その日も『魅惑の妖精亭』は繁盛していた。 ルイズは扉を開けて入ってきた客に屈託のない笑顔を向け、空席へと案内する。 フードを被った客は、席に案内されるとルイズを見上げて小声で呟いた。 「何をしてるんだこんな所で」 「え?……やだ、何言ってるのよ、貴方が教えてくれたんでしょ?」 フードの影から覗く瞳と金髪には見覚えがある、まごうことなき銃士隊のアニエス、その人だった。 「潜伏には魅惑の妖精亭がいいって言ったの、貴方じゃない」 「それはそうなんだが…」 「無駄話をしに来た訳じゃないんでしょ?ご注文は?」 「とりあえずコレとこれを貰おうかな」 「はい、ワインとシーザーサラダね、承りました」 トレー片手に厨房へと入っていくルイズを見て、アニエスは小さく呟いた。 「冗談のつもりだったんだが……」 ルイズとワルドが潜伏先に選んだのは、城下町ではそれなりに人気の酒場『魅惑の妖精亭』だった。 アニエスの部下がこの店で働き、情報収集を務めていたことがある。 そのため『情報収集を兼ねるなら魅惑の妖精亭がいい』と言ってしまったのだが。 アニエスとしては、アニエスの息がかかった秘薬屋や、郊外の隠れ家に潜伏して欲しかったが、すでに働き始めている以上取りやめろとは言えない。 露出度の高いキャミソール姿で給仕をするルイズ、それを見て、アニエスは再度ため息をついた。 今のルイズはルイズであってルイズではない。 『ロイズ』という偽名を名乗っているだけではなく、姿形も大きく違う。 まず、背が高い。アンリエッタより10サントは高い。 その上胸が大きい、中に何を詰めているのか知らないが、とにかく膨らんでいるのは確かだ。 そして髪の毛は茶色の染料で染められ、王宮を出る前に『固定化』をかけられている。 顔立ちも違う、鼻はほんの少し高く、いつものルイズよりほんの少し面長になっており、しかも口元には黒子までついている。 ごくごく親しい人間でも、一目で彼女をルイズだと見抜くのは難しいだろう。 「反則的だな…あの能力は」 アニエスは、変身前のルイズを思い出し、静かに呟いた。 厨房に注文を届けたルイズは、この店の店主であるスカロンと二~三言言葉を交わして、再度表に出て行く。 皿を洗いながらそれを見ていたのは、精悍な顔立ちの男性、ワルドだった。 店主のスカロンは、ワルドがルイズを見ていたのに気付くと、ワルドに近づいて肩を叩く。 「ロイズちゃん頑張ってるわねー!ロイドちゃんはお兄さんとして気になるかしら!」 「ええ、まあ」 髭を蓄えた中年の男性が、くねくねと体を揺らしながらオネエ言葉で喋るのはちょっと不気味だ、しかしミノタウロスを相手にするより遙かに気楽だ。 ワルドは照れくさそうに笑いつつ、皿洗いを続けていた。 この店でワルドは『ロイド』ルイズは『ロイズ』と名乗っている。 二人は訳ありの没落貴族という設定で、身分を問わずに雇ってくれる『魅惑の妖精亭』にやってきた… そういう設定なのだ。 ワルドは人間の腕と見まがう程精巧な義手を巧みに操り、皿洗いを続ける。 水をくむのが面倒なので、義手に仕込んだ杖から、魔法で水を継ぎ足しつつ、延々と皿を洗っていった。 ふと、手を休めて、給仕口から店内を見渡す。 料理を運んでいるルイズと目があって、ウインクを返された。 「訳ありの没落貴族か…駆け落ちみたいで悪くないな」 トリステインの貴族らしくない、奇妙な満足感に包まれて、ワルドは笑った。 ルイズはこの店で、ブルリンと旅をした数日間のことを思い出していた。 注意深く周囲を観察し、人々の会話に耳を傾ける。 ただそれだけのことなのに、ルイズの耳には刺激的な話がどんどん入ってくるのだ。 あの時ブルリンと会わなければ、五感をフルに使うことも無かったろうし、情報収集の大切さも気付いていなかったかもしれない。 商売のために高等法院の許可貰うに、どんな抜け道を使うとか。 脱税スレスレの節税方法とか、北側の衛兵のいい加減さとか… アニエスの部下が、情報収集のためこの店に赴いたこともあるそうだが、その理由が分かる気がした。 特に気になるのは、アンリエッタに関する噂だった。 アンリエッタは聖女といわれ讃えられているが、すべての平民がアンリエッタを讃えているわけではない。 そもそもの原因となったウェールズ皇太子との恋愛話は平民達の噂の的だった。 アンリエッタとウェールズが以前から恋仲だったと、まことしやかに噂されているが、ラブレターのことまでは噂されていなかった。 二人を称えるもの、けなす者、酒場には多種多様な客が来る。 ルイズは、この不思議な空間を気に入っていた。 「ねえちゃんワイン注いでくれよ!」 そう言いながら、酔った客の一人がルイズの尻を撫でる。 ルイズはすぐに振り向いて、テーブルに置かれているワインの瓶を手に取った。 「お触りはいけませんよ」 そう言って笑顔でワインを注ぐ。 ワインをつぎ終わり瓶をテーブルに置くと、その客はルイズの腕を掴んで、酒臭い息を隠そうともせずルイズに顔を近づけた。 「なあ仕事の後どうだい?俺とさぁ…あ、あれ~?」 ルイズは男の腕を払い、逆に握り返す。 「お客様、飲み過ぎですわよ」 掌から少しずつ、少しずつ血を吸っていく。 「あ~…飲み過ぎたか…なあ~………」 みるみるいうちに顔色が青くなり、男は眠るようにテーブルに突っ伏した。 「あら大変!」 それを見た他の店員がルイズに近づく、青ざめた客を見て、どうやら酒に悪酔いしたと思ったらしい。 「ロイズちゃんは注文を取りに行ってくれない?この人よく酔っぱらって寝ちゃうのよ」 「解ったわ、ありがとう、ジェシカさん」 そう言ってルイズはテーブルを離れる。 心なしか、ルイズの胸は先ほどより少し膨らんでいる気がした。 夜も遅くなり、客が少なくなった頃、黒髪の少女ジェシカがルイズを呼んだ。 「ね、ちょっとこれ手伝ってくれる?」 ジェシカの前には木箱が置かれており、そこには沢山の食材が入っている。 「わかったわ」 ルイズは短く返事をすると、重そうな木箱を軽々と片手で持ち上げた。 「どこに持って行けばいいのかしら」 「え……えーと、ついてきてくれる?」 ジェシカは、少し狼狽えながら倉庫へとルイズを案内した。 倉庫の中で木箱を開け、中身を棚に並べていく。 すると、不意にジェシカがルイズに耳打ちした。 「ねえねえ、あったしー、わかっちゃった」 「え?」 「訳ありって言ってたけど…身分違いの恋とか、駆け落ち?」 ルイズは唇を手に当て、少し考える仕草をすると、首を横に振った。 「私とロイドは兄妹よ」 だが、ジェシカは不敵な笑みを漏らすと、人差し指を立てて顔の前で左右に振る。 「あたしはね、パパにお店の女の子の管理も任されてるのよ。女の子を見る目は人一倍だわ。ねえねえ、どんな訳があるのよ。ただの駆け落ちじゃないでしょ?誰にも言わないから、ね?教えてよ」 ルイズが黙っているのを見て、ジェシカは微笑む。 「もしかしてぇ…貴族のロイドさんが、メイドの貴方に恋しちゃった…とか?」 内心では『あたしは公爵令嬢よ』と思っていたが、そんなことは口には出せない。 ルイズはジェシカの顔を見つめて、一つ、質問してみることにした。 「どうしてそう思ったの?」 「だって、あの人プライド高そうだもの。貴方はお尻を触られても飄々としてるじゃない、こういう仕事慣れてるでしょ」 ルイズは心の中で、少しだけ苦笑いをしていた。 自分はいつの間にか、平民が板に付いていたようだ。 「私が貴族で、あの人は従者だったの」 「まさかぁ!」 ジェシカが口を手で覆いつつ、笑う。 つられてルイズも笑い出した。 「本当よ」 「本当に?」 「じゃあ嘘でいいわ」 「何よ、ずるーい!」 ころころと笑うジェシカを見て、ルイズはふと何かを思い出した。 『そうだ、この笑顔…シエスタに似てる』 その頃、洗い物を終えたワルドは、ルイズよりも一足早く部屋に戻っていた。 ルイズとワルドに与えられた部屋は、ベッドが二つ並んでいるだけの小さな部屋で、余計なものは一切置かれていない。 ベッドの下に置かれていたデルフリンガーを取りだすと、鞘から少しだけ引き抜いてベッドの上に置く。 『ずいぶん繁盛してんなあ、この店。どーだい皿洗いは?』 「意外と疲れるものだな」 『そりゃそーだろ、ところで、嬢ちゃんは』 「ルイズなら倉庫だ、女性同士の内緒話だろう」 デルフリンガーと話をしつつ、ワルドは先ほどルイズから渡された紙切れをポケットから取り出す。 アニエスから渡された紙切れには、リッシュモン追跡の様子が簡潔に書かれていた。 「…………商人、か」 『ん?』 「メイジが商人に化けているようだ、そいつがリッシュモンの手先らしいな」 『そいつをどーするんだい』 「捕まえるさ、聞くまでもなかろう?」 『その後だ、殺すのか?』 ワルドは顎に手を当てて、しばらく考えこんだ。 「……衛兵に引き渡すさ」 『おでれーたな、おめえ、あのギラギラした殺気がサッパリ消えてやがる』 「ルイズのおかげだよ」 そう言いながら、ワルドはデルフリンガーをベッド脇に立てかけた。 「彼女の苦悩に比べたら、僕なんてちっぽけなものさ」 デルフリンガーも同じ事を考えていた。 彼女は、自分の幸せを犠牲にした分だけ、その周囲にいる人を助けている気がする。 『あー…考えてもしょうがねえなあ』 「ん?」 『なんでもねえ。おめえが嘘を言ってないのは解った。嬢ちゃんを悲しませんなよ』 「そのつもりさ」 ルイズは、フーケに、ワルドに、ティファニアに、アンリエッタに、ウェールズに、アニエスに『頼られている』 だが、彼女が『頼れる』人は居ない。 彼女が本来頼るべき母は、シエスタとモンモランシーの二人の到着を、笑顔で迎えていた。 To Be Continued→ 戻る 目次へ
https://w.atwiki.jp/yggdrasillwar/pages/17.html
ルイズ・フランソワーズ&メンター組◆yy7mpGr1KA 「おい、もう何回失敗してんだよー」 「所詮『ゼロ』は『ゼロ』か」 「マントが煤けちゃうじゃない」 「静かに。貴族がそんな口を聞くものじゃありません。さ、ミス・ヴァリエール」 飛び交う野次を無視してもう何度目か分からない精神集中に入る。 そして、もはや容易く諳んじられるほどに唱えた呪文を口にする。 「我が名は『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』。五つの力を司るペンタゴン。我の運命(さだめ)に従いし、"使い魔"を召喚せよ」 すでに祈りに近い言霊。 ゼロと蔑まれるのはイヤ。 魔法が使えない貴族なんてご先祖に申し訳が立たない。 だから、こんどこそ…… サモン・サーヴァントはメイジとしての入門だ。 これができれば、自分も魔法が使えると胸が張れる。 だから、お願い。 私を、魔法使い(メイジ)にして…… 「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよッ。神聖で美しく、そして、強力な使い魔よッ! わたしは心より求め、訴えるわ……我が導きに、答えなさい!!」 杖を振るう。 成功すればそこには使い魔が現れる……はずだった。 しかし起きたのは何度目かも分からない爆発。 それも今までのものとは規模の違う大爆発で、粉塵で一時視界がふさがれる。 「げほっ、げほっ…おい、また失敗かよ!」 「もう、いい加減終わりでいいじゃないですか、コルベール先生!」 「本人が望む以上そうもいきません。ミス・ヴァリエール、どうなりましたか? …………ミス・ヴァリエール?」 景色が晴れたそこに、使い魔どころかいるはずの少女もいない。 公爵家三女の消失に、学園は騒然となった。 ◇ ◇ ◇ 「召喚に従い参上しました。あなたが私のマスター?」 「え……?どこここ、ッ痛!」 突如切り替わった風景。 目の前にいる栗色の髪の女性。 左手の甲に走る痛み。 そして聖杯戦争という訳の分からない知識。 様々な事象がパニックを呼び起こす。 「もうっ、何よこれ!なんで私にルーンが刻まれてるのよ!」 「わ、落ち着いてマスター。多分呼び出される寸前までサーヴァントの召喚をしてたから記憶の混乱があるんだと思う」 「サーヴァント?それじゃあ、あなたが私の使い魔なの?」 「ええと、まあそういうことになるのかな。 聞こえたよ、あなたの声が。立派な魔法使いになりたい、って。だから私が来たんだ」 使い魔の召喚に成功した。 それに喜びを覚え、パニックが興奮へとすり替わっていく。 自分は偉大なメイジへの一歩を踏み出せたのだ、と。 しかしそれとともに自らに刻まれた知識を正確に認識し、興奮は冷めていく。 「聖杯戦争、って……」 「うん、そう。マスターは巻き込まれちゃったことになるのかな…… だからこそ私は来ることができたんだけど。 どうかな、マスター?マスターは何か叶えたい願いはある?」 聖杯。 万能の願望器。 叶えたい願いがあるか、と問われればそれは 「私は一人前のメイジになりたい……」 「うーん、たしかにそれは立派な夢だけど聖杯に願うものじゃないかな。 サーヴァントはマスターの魔力で維持されてるから分かるんだけど、あなたの魔力量は凄いよ。 同じ年くらいの部下を教えたこともあるけど、多分魔力量だけなら彼女たちより上じゃないかな。 小っちゃい子供が、歩けるようになりたい!って言っても、それは時間と経験を積めばできるようになるでしょう?」 ルイズが口にした願いをやんわりとだが否定する。 しかしそれと同時にルイズの将来を肯定する。 「私は、魔法が使えるようになるの……?」 「魔法の定義にはよってきちゃうけど……うん、大丈夫。 私が、指導者(メンター)のサーヴァントがそれは保障するよ。こう見えて魔術師(キャスター)としても一流なんだから!」 朗らかに笑って背中を押す。 こんな風に後押ししてくれる人は次姉を含めほとんどいなかったせいか、僅かに目が潤む。 しかし涙を落とすのは控え、貴族として堂々と振る舞う。 使い魔の前で情けない姿を晒すわけにはいかない、と。 そして思い浮かべた姉のことを口にする。 「それじゃあ、私には病にかかった姉がいるの。その人の病気を治してあげたいわ」 「お医者様じゃ治せないんだよね?」 「治せたら苦労しないわ」 僅かに魔法を行使するだけで苦しむ、心優しい姉カトレア。 愛しい家族を助けてあげたい。 「うん、それは確かに聖杯に託すような願いだね。 じゃあ、それを聖杯に願って本当にいいの?」 「何を言って……」 思い至る。 聖杯を使うということは、同じく願いを抱えたものを蹴落とすということだ。 「あなたは聖杯を求めないの?サーヴァント、なのに」 「私?私はね……うん、いらないって言ったら嘘になるよ。 でもそのためにたくさんの人を不幸にするようなことはしたくない。 ……子供のころね、なんでも願いを叶える宝石、っていうのを巡る事件に関わったことがあったんだ。 あの事件に悪い人はいなくて、ただ不幸な人が幸せになりたかっただけだったんだ。 でもその人はきっと、身近にある幸せに気付けていなかっただけだったの」 娘を失くし、娘を産み出し、娘を否定し、娘を求めた母。 母となって僅かに分かる、その気持ち。 その深い愛憎を否定することはできない。 そして事件そのものもまた、かけがえない親友との出会いという意味では否定したくない。 ただ、もし。母が新しい娘を愛する、幸せな家庭を築けていたら。それも形は違えど幸せだと気付けていたら。 「願いは否定しないよ。でも、願いに囚われちゃいけないと思う。みんな変わってく…変わってかなきゃいけない。 だから、お話がしたいんだ。サーヴァントとも、マスターとも。 それしか方法はないの?もしくはこんなにたくさんのサーヴァントがいても解決できないようなことなの?本当にそれでいいの?って。 ……きっと、反発されると思う。考えた果てにここにいるんだ、って答える人もいると思う。 でもそれが、私の願いだから。次元を超えて、沢山の人が不幸にならないようにするのが。 世界はいつだってこんなはずじゃないことばかり。その現実に逃げるか立ち向かうかは個人の自由だけど、その自分勝手な悲しみに無関係な人間を巻き込む権利なんて誰も持ってない……なーんて受け売りだけど。 だからこうしてマスターともお話をしてるんだ」 問われた疑問を反芻する。 本当にそれでいいのか。 ラ・ヴァリーエール公爵家として恥じない選択なのかと。 「ねえ、あなたメンターなのよね?魔法も使える」 「次元航行や転移もしてたし、あれは第二魔法っていうはずだから……うん、そうだよ?」 「それなら、私に魔法を教えて。私が、カトレア姉さまを治せるようなメイジになればどっちの願いも叶って一石二鳥だわ」 「聖杯は、いいんだ?」 「……必要な犠牲なら、貴族として杖をとる覚悟はあるわ。 でも身勝手な理由で魔法を振るうのは貴族として恥ずべき事よ」 血に汚れた願望器で体を治しても小姉さまは喜ばない。 むしろ怒る…いや、悲しむだろうか。 何より、弱者を守るべき力で欲望を叶えようとするなど、ラ・ヴァリエールとして自分が許せない。 「そっか。うん、よかった」 笑顔を見せるメンター。 そこから確かな安堵が感じられるが……もし、反発したならば喧々諤々と論を交わしたであろう強さも垣間見える。 いや、もしかするとそれ以上だろうか。 「先に言っておくけど私が教えられるのは私の知ってる魔術。 マスターの知ってるそれとはちょっと違うかもしれない。ミッドチルダ式、っていうんだけど」 「? 何よそれ。何処の田舎魔法?始祖ブリミルの四系統でいうとどれになるの?」 互いの常識の差異。 それをメンターが主導となってすり合わせていく。 幸いにしてメンターは多数の平行世界の存在を知り、またルイズも優秀な生徒であり、反発はあったが異なる魔術形式の存在をしぶしぶ受け入れる。 「私は始祖ブリミルの魔法を習得したいんだけど……」 「うーん、こういう言い方はしたくないんだけど、人には向き不向きがあると思う。 マスターが習得できなかったのは、それが向いてなかったんじゃないかな…… 聞いたところ魔力の運用方法とか基本的なところも教わってないみたいだし、キチンと制御方法を学んだうえで改めて向き合っても遅くないと思うけど」 「それじゃあ、誰も私が魔法を使えるようになったと認めてくれないじゃない!!」 内に秘めた劣等感が顔を出す。 ただ使えるだけではない、それを認められなければ貴族として、メイジとしての名誉は得られないと。 「うん、そうかも。大きくなった組織とか体制っていうのはいろいろ面倒だよね。 新しいものっていうのをなかなか認めてくれない…… 始祖ブリミルの魔法じゃなきゃ認めてくれないっていうのなら簡単だよ。 あなたが始祖ブリミルになればいいの」 「は?」 「あ、言い方が悪かったかな。 新しい魔術方式を提言して、それを定着させていくの。 貴族よりは学者寄りだけど、もしできたら始祖ブリミルに並んで歴史に名を残す偉業だよ?」 「そんなの……畏れ多いわ!」 魔法の祖、ブリミル。 神格化された彼の姿は偶像を作ることすらおこがましいとされる。 そんな方に比肩しようなど、考え付きもしなかった。 「偉大な一歩っていうのは先人のさらに一歩先を行くことだよ。 それには先人の足跡を辿る必要がある。 そして先人の足跡を踏みつける必要がある。 ……とっても難しいことだと思う。人によっては無礼、なんていうかも。 でもそれができないと、きっと人は前に進めないよ。 あなたならそれができると思う。そして、あなたの家族はきっとそんなあなたを誇りに思ってくれると思う」 貴族。 直接は知らない文化だ。 でも、立派な家に生まれる苦労っていうのはあるんだろう、っていうのは二人の幼馴染を見て察してる。 声とか雰囲気とか、どことなくそのうちの一人と似ているし。 これほどの誇り高さというのは家族に恵まれないと身に付かない。 きっと、いい人たちなんだろう。 始祖ブリミルという人物に対する畏敬の念というのは少々分かりかねるが、聖王信仰に似たものだろうか。 だとしたら宗教的な弾劾もあるかもしれない……けど、それをはねのける強さがこの子にはある。 期待の眼を向めるサーヴァントに対する答えは 「ああ、もう!とりあえずあなたの知ってる魔法を教えなさい! 身に付けてからどうするかは後で決めるわ!」 「うん、いいね。 無謀なのは好きじゃないけど、我武者羅なのは嫌いじゃないよ。 時間もあまりないし、早速やろうか」 宝具を取り出し、術を行使しようとするが 「あ、待って。私まだあなたの名前を聞いてないんだけど」 「え?あ、そっか。召喚の詠唱で私はあなたの名前を知ってるからてっきり自己紹介したつもりになっちゃってた。 ごめんね。それじゃあ、改めて。 メンターのサーヴァント、高町なのはです。マスターの名前は?」 「え、知ってるんでしょ?」 「こういうのはお互いに名乗るものでしょ」 「はぁ、わかったわよ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。マスターと呼びなさい」 「はい、マスター。私のことは基本的にメンターって。 ……それじゃあ、始めようかイジングハート」 「All right」 胸元に下げた赤い宝玉が答える。 そして結界が展開し、通常の時空から切り離される。 「この結界の中ならよほどの魔術師じゃないと私たちには気付けない。 基本的にはここでトレーニングね」 世界が塗り替えられるとともに意識も切り替わったか、なのはの目付きが鋭くなる。 長姉や母が厳しい指導をするときに近似した空気に僅かにたじろぐルイズ。 「あ、えっと…他のサーヴァントとのお話はしなくていいのかしら?」 「聖杯戦争、だよ。戦場に何もできない新兵を連れて行くわけにもいかないからね。 もちろんサーチャーは飛ばしてるし、エリアサーチは欠かさないけど、マスターのトレーニングの重要性の方が今は高いよ。 まずは基本の基本、念話から行くよ。それができたら感覚共有。そこまでいったら魔力操作。 その後護身を優先してバリアジャケットの作成、シールドによる防護。そこからはマスターの向き不向きによるけど飛行とか、希望してる治療とかいこうか」 教導の予定をつらつらと述べる。 厳しい先行きにめまいを覚えるルイズ。 けれども、今までとは違う魔法へのアプローチに僅かながら胸を膨らませてもいた。 【クラス】 メンター 【真名】 高町なのは@リリカルなのはシリーズ 【パラメーター】 筋力E 耐久D+ 敏捷C++ 魔力A+ 幸運A 宝具B+ 【属性】 秩序・善 【クラススキル】 指南の心得:B+ 数々の英雄を育て上げた者が得るスキル。指導者としての手腕。 対象の才能を見極めたうえで適したスキルを対象に習得させる。 ランクBならば自らの持つ技能であれば習得させる事が可能。 習熟度は通常自身のものが上限となるが、対象の才覚によってはプラス補正がかかり、自身の技能を独自にアレンジすることで場合によっては彼女以上のものを継承させることができる。 彼女の教え子はディバインバスター、スターライトブレイカーという技を独自の形で習得している。 高町なのははミッドチルダ式と呼ばれる魔術に精通し、専門ではないがベルカ式と呼ばれる魔術の知識も有する。 また最低限ながら軍隊格闘も習得しており、英霊となったことでとある暗殺剣術の知識も僅かながら得ている。 カリスマ:E 軍団を指揮する天性の才能。 カリスマは稀有な才能で、一軍の教導官としてはEランクでも破格のもの。 一小隊程度なら十分な士気高揚が望め、平時なら関係構築には十二分なもの。 しかし指揮・指導方針を明確に伝えない等、意思疎通に齟齬が生じた場合は反感を招くこともある。 【保有スキル】 魔術:A オーソドックスな魔術を習得。 主にミッドチルダ式と呼ばれる術式に精通し、その中でも砲撃魔術や防御魔術を得意とする。 戦闘続行:C 不屈の闘志。 瀕死の傷でも長時間の戦闘を可能とする。 魔力操作:A+ 魔力放出の上位スキルであり、さらに精密な操作・行使を可能とする。 彼女の場合魔力収束というレアスキルも保持し、多彩な砲撃、射撃魔術の発動に役立つ。 魔力放出をさらに効率化しての高速飛行、数十発もの魔力弾の精密操作、周囲一帯の魔力を集約・収束しての砲撃など多彩な魔術に応用する。 並列思考:A マルチタスクとも呼ばれる。 複数の思考を同時平行して進める技術であり、飛行魔術を行使しながら他の魔術の準備・行使をするなど空戦魔導士には必須と言えるスキル。 魔力弾の操作も魔力操作に加えて、的確に動かせるのはこのスキルの賜物である。 Aランクともなれば魔術行使の難しい空間で飛行、砲撃、バインド、索敵の同時行使なども可能。 【宝具】 『不屈の心はこの胸に。そしてこの胸に小さな勇気と奇跡を(レイジングハート・エクセリオン)』 ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人 なのはが魔術を行使する際に触媒とするインテリジェントデバイス。 いわゆる魔導師の杖、魔術霊装であり彼女に合わせて砲撃特化のデバイスとなっている。 本来『不屈の心はこの胸に(レイジングハート)』であったのをベルカ式カートリッジシステムの導入により形態変化した。 中距離射撃と誘導管制、強靭な防御力を含めた中距離高速戦専用モードのアクセルモード、射程・威力の強化に特化したバスターモード、フルドライブのエクシードモード、リミットブレイクのブラスターモードなど戦況に合わせて変形する。 スクライアという遺跡や古代史の探索・発掘をしながら旅を続ける放浪の一族が発見したものであり、通常のデバイスより高位の神秘を持つ。 そしてなのはもユーノ・スクライアから受け継いだものであるため、もし彼女とレイジングハートが認める魔術師がいればこの宝具を継承することができる。 『胸に宿る熱き彗星の光(スターライトブレイカー)』 ランク:D+++ 種別:対人/対軍/対城宝具 レンジ:5~10 最大捕捉:500人 高町なのは究極の一。 術者がそれまでに使用した魔力に加えて、周囲の魔導師が使用した魔力をもある程度集積することで得た強大な魔力を一気に放出する攻撃魔法。 いくつかのバリエーションがあり、チャージする魔力量や、その術式によって規模・特性は変化。 結界破壊の特性を付与する、ビットとの複数同時発射など戦況に応じて使用する。 宝具ではあるが、リィンフォース・アインスやティアナ・ランスターなど高町なのは以外の英霊も彼女を通じて習得しており、指南の心得による継承が可能である。 【weapon】 魔力カートリッジ ベルカ式デバイスに導入されている技術。 カートリッジに魔力を蓄えリロードすることで戦闘中にブースターとする。 キャスターでの召喚でないため道具作成のクラススキルを保持しないが、既存のカートリッジを魔術スキルと魔力操作スキルを応用することで限定的に使いまわすことが可能。 【人物背景】 第二魔法に類似する技術を保持する『時空管理局』という組織に所属する戦技教導官。 第97管理外世界(地球)の出身で、天才的な魔導師としての才を持つ。 少女時代からその才を存分に発揮し、PT事件、闇の書事件、JS事件などの解決に尽力。 その事件を通じて信念と魔術を真っ向からぶつけ合い、多くのかけがえない友や家族を得ている。 よく言えば真っ直ぐなな人物。 しかし幸か不幸かその真っ直ぐさと恵まれた天賦の才により無茶することが多く、11歳の時には二度と魔法が使えないのでは、と言うほどの重傷を負っている。 それはリハビリにより復帰するのだが、JS事件においてもかなりの無茶をし、後遺症を抱えるほどになってしまう。 その後は基本的には前線に留まるが、一時期は娘の生活に合わせるために平穏に暮らし、その甲斐あってか数年後には新装備もひっさげて戦場に臨む姿を見せる。 基本的には心優しい人物。 戦場での彼女を知らない少女からは家庭的で穏やかな良き母と見られており、それは間違ってはいない。 だが、意見などをぶつけ合うことにあまり戸惑いなく、自身の真意をあまり語らなかったりする不器用さも目立つ。 余談だが、弓兵(アーチャー)や魔術師(キャスター)ではなく、指導者(メンター)としての召喚であるため、ストライクカノンやフォートレスなどの武装は持たない。 しかしメンターとしてならブラスターモード使用によるリンカーコアへのダメージはない時期(JS事件解決前)の肉体で召喚されるため、スキル:魔力操作のランクや魔力ステータスは高く召喚され、またクラス補正により指南の心得に大幅な上昇、プラス補正がかかる。 【サーヴァントの願い】 無為な闘争と犠牲の否定。 聖杯に願うのではなく、聖杯を目指す魔術師と話していく。 【基本戦術、方針、運用法】 戦術としてはキャスターに近いが、陣地作成および道具作成のクラススキルを持たないため、苦しい戦いになる。 それでもアーチャー顔負けの魔弾の射手であり、サーヴァント相手に防戦しながら敵マスターを仕留めるには十分な戦力。 最大の強みはマスターの実力が時間を追うごとに増していき、なのはにサーヴァントが苦戦した場合マスター同士の闘争で敗れる可能性が高い。 予選期間をフルに使って鍛えたマスターの実力は三日会わざれば括目して見よ、と言えるほどに成長しているだろう。 時間を追うごとに厄介になっていく特性もキャスターに近似する。 ただしなのは自身は聖杯狙いではないため、余程の事がなければマスターを仕留める方針にはならないだろう。 逆を言えば、余程のことがあれば彼女の砲撃がマスターを射抜くこともある。 【マスター】 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔 【令呪】 左手の甲。 ガンダールブのルーンに近似する。 【マスターとしての願い】 魔法の習得。 ただし今のところそれを聖杯に願うつもりはない。 【weapon】 杖 魔術行使のための霊装。 【能力・技能】 虚無の魔術 始祖ブリミルのみが行使したという失われた魔術形態。 地水火風の四属性いずれにも当てはまらないもののうち、人間が行使する魔術の多くをルイズの世界、ハルケギニアではそう呼ぶ。 空間転移、記憶操作、幻術、解呪、固有時加速など多彩な術がある。 しかし現時点のルイズは自らがこの使い手であることは自覚しておらず、術式の一切を行使できない。 僅かに『エクスプロージョン』の片鱗を暴走のように発動させるのみ。 それでも始祖直系の6000年続く魔術師の家系であり、優れた魔術回路を持つ。 特に強い感情によって励起する回路で、何もなくとも1日あればかなり回復するが、怒りや嫉妬などの負の感情を覚えると魔力を一気に生成できる。 【人物背景】 6000年前にハルケギニア式とでも呼べる魔術方式を編み出した魔術師、始祖ブリミルの子孫、ラ・ヴァリエール公爵家の三女として生を受ける。 父母も二人の姉も優秀な魔術師にして堂々たる貴族であり、ルイズも気高い精神と豊富な知識を持つ。 魔術学院において座学や理論においては優秀な成績を示すのだが、実践だけはうまくいかず、なぜかどんな術を行使しても爆発を引き起こしてしまう。 幼少期からそれは続き、魔術のできない「ゼロ」のルイズと蔑まれ、劣等感に苛まれる人生を16年送ってきた。 最後の希望として使い魔召喚の儀に臨んだ瞬間の参戦。 本来の時間軸においては使い魔の召喚に成功し、様々な経験を経て人間的に成長。 後にハルケギニアの多くの魔術師とは扱う術式が根本から異なるために魔術行使ができなかったことが発覚。 国でも有数の魔術師として目覚める。 長年のコンプレックスと貴族としての誇り高さが相まって若干面倒な性格。 特に宿敵のツェルプストー家の人間や、平民(魔法を使えないもの)、大切なものを奪おうとするもの(恋敵など)にはかなりきつく当たるところがある。 とはいえ根本にあるのは名門貴族の娘らしく、「貴族は平民(力のないもの)を守らなければならない」、「守るためには魔術という力が必要である」というノブレス・オブリージュからくるところが大きい、齢16にして立派な貴族である。 【方針】 なのはに師事し、魔術を学ぶ。 【クラス捕捉】 クラス:指導者(メンター) 自身の技能や実力に加え、優れた指導者として英霊を育て上げたものの適応されるクラス。 ケイローン、スカアハ、ルシール・ベルヌイユ@からくりサーカス、プリンス・カメハメ@キン肉マン、エリザベス・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険、ヨーダ@スターウォーズなどが該当する可能性のあるクラス。 クラススキルとして、弟子を育てる【指南の心得】と、弟子を惹きつける【カリスマ】を持つ。 召喚者含む弟子に対し自身の技能を伝授できるサーヴァント。 召喚にあたっては自分一人でできることは限界を迎え、さらなる力を望む者でなければこのクラスのサーヴァントを呼び寄せることはできない。 このクラスに当てはまる者は個々が優れた英霊であるため、本来は通常の7クラスでの召喚となってしまう(ケイローンならばアーチャー、スカアハならランサー、ヨーダならセイバーなど)。 マスターとなるものが今以上の力を渇望し、それに応える英霊があればメンターとして降臨する。 力をなくした黒崎一護@BLEACH、別離の二年間を過ごした麦わらの一味@ONE PIECE、安達 明日夢@仮面ライダー響鬼などならばそれに相応しい師と出会うであろう。 ただし例外も存在する。 自身以上に有名、または優秀な弟子があまりに多く存在するせいでメンターとしての適性が高すぎ、ほぼこのクラスでしか現れない英霊というのも存在する。 司馬徽、吉田松陰、ロード・エルメロイⅡ世、亀仙人@ドラゴンボールなどがそうした例外にあたる。